Amrita2はどのように動くのか

2.0.1をリリースして、同時にいくつかドキュメントを追加しました。

この中で、HowAmrita2Worksというのを翻訳(プラス英語でうまく言えなかったニュアンスを追加)します*1

内部構造に関する説明なのですが、中身を知りたい人だけではなくて、普通にユーザとして使う方にも、これが一番わかりやすいのではないかと思います。

概略

Amrita2は、以下の3つのパートで構成されています。

つまり、次のように動作します。

テンプレート→(プリプロセッサ)→ピュアXMLのテンプレート→(Hpricotパーサ+Amrita2コンパイラ)→Rubyコード→モデルデータを与えて実行→結果のHTML。

コンパイラ

Amrita2の基本的なアイディアは、特定の属性が設定されたHTMLエレメントをRubyのコードに変換して実行するということです。

たとえば

<span am:src="xxx" />

というテンプレートを下のようなコードに変換するとか

def render_with(x)
   "<span>" + x[:xxx] + "</span>"
end

あるいは

<p am:src="body">
   <span am:src="template" /> is a template library for <span am:src="lang" />
</p>

というテンプレートを下のようなコードに変換し

def render_with(x)
  $_ = x[:body]
  __stream__ = "<p>"
  __stream__ << $_[:template]
  __stream__ << " is a template library for "
  __stream__ << $_[:lang]
  __stream__
end

次のように実行するということです。

template.render_with :body=>{ :template=>'Amrita2', :lang => 'Ruby' }

そして、次のような結果を出力するわけです。

<p>Amrita2 is a template library for Ruby</p>

hello.rbというサンプルの、set_trace()という行を生かせば、実際に内部でどのようなRubyコードを生成するか確認することができます。

実装の都合とかいろいろな理由で実際のRubyコードはずっと複雑ですが、テンプレートを上記のようなRuby コードにするというのが、Amrita2の基本的なアイディアです。

プリプロセッサ

テンプレートの動的な部分を、属性で指定するという方法は、テンプレートが整形式のXMLになるというメリットがありますが、実際にやってみると、属性をたくさん指定するというのは結構見づらかったので、同じ意味のことをもっと簡単に書けるAmXMLという記述方法をサポートしました。

AmXMLの記述は、全て、プリプロセッサによっていったんXMLに変換されてから処理されます。

たとえば、次のようなテンプレートは

<<html<
  <<body<
    <<h1 :title>>
    <<p :body<
      <<:template>> is a html template libraly for <<:lang>>

こうなります。

<html>
  <body>
    <h1 am:src="title" />
       <p am:src="body">
          <span am:src="template" /> is a template library for <span am:src="lang" />
       </p>
    </h1>
  </body>
</html>

XMLに慣れていたりツールが揃っている場合には、最初からこの記述方式で書くこともできます。

詳細はhttp://retro.brain-tokyo.net/projects/amrita2/wiki/AmXML:AmXMLを参照してください。

フィルター

Amrita2(のXML to Ruby コンパイラ)は、フィルターによって、どのように Ruby に変換するかを、コントロールすることができます。

<<a :link | Attr[:href=>:url, :body=>:text]>>

これを同等なXMLで記述するとこうなります。

<a am:src="link" am:filter="Attr[:href=>:url, :body=>:text]" />

am:filter属性は、Rubyのソースとして評価され、Filterオブジェクトを生成します。このFilterオブジェクトが、コンパイルを制御します。

この例では、Attrというフィルターが、次のコードと同等の Rubyコードを生成します。

def render_with(x)
  $_ = x[:link]
  __stream__ << "<h1 href='"
  __stream__ << $_[:url]
  __stream__ << "' >"
  __stream__ << $_[:text]
  __stream__ << "</a>"
  __stream__
end

つまり、動的な要素をどのようにテンプレートに埋めこむかについては、Filterが自由にコントロールできるので、いろいろなことができます。

詳しくは次のソースを参照してください。

http://retro.brain-tokyo.net/projects/amrita2/browse/trunk/amrita2/specs/filters.rb

また、今後、最適化の為のフィルターを追加して性能を改善してく予定です。与えるデータの形式が決まっているのであれば、それ専用のフィルターを作ることで、ほとんどの場合に最速のRubyコードを出力できるはずです。

  1. 普通に書きやすい形でテンプレート作成
  2. ホットスポットを見つける
  3. 作者(私)に「このテンプレートから、これこれのRuby コードを吐くフィルタ作ってくれ」と頼む
  4. 作者が作ったフィルタを受け取ってインストール
  5. そのフィルタの指定をテンプレートに追加

この手順で、性能問題は解決できます。

データタイプ

Amrita2は、さまざまなRubyのビルトインタイプとユーザ定義のオブジェクトを受け取ることができます。言いかえれば、コンパイラはどのよようなデータを渡されるかをコンパイル時に知ることができません。

そこで、データを読み取る時には、amrita_valueというメソッドを使用するようになっています。

def render_with(x)
   "<span>" + x.amrita_value(:xxx) + "</span>"
end

amrita_valueは、たとえば、Hashクラスでは次のように定義されています。

def amrita_value(name)
  self[name.to_sym]
end

しかし、Structオブジェクトは、次のように定義された同じ名前の別のメソッドを使います。

def amrita_value(name)
   self.__send__(name)
end

Bindingクラスは、さらに別の定義を持っています。

class Binding
  def amrita_value(name)
    eval "begin; #{name}; rescue(NameError); @#{name};end;", self
  end
end

Bindingオブジェクトを渡すと、ローカル変数をテンプレートに埋め込むことができます。

t = Amrita2::Template.new('<strong am:src="aaa" />')
aaa = 'Amrita2'
t.render_with(binding)  # => "<strong>Amrita2</strong>" 

詳しくは下記を参照してください。

http://retro.brain-tokyo.net/projects/amrita2/browse/trunk/amrita2/specs/datatypes.rb

インラインERb

ERbを含んだテンプレートの扱いについては、InlineERbを参照してください。

*1:だれか英語に(再)翻訳してくれる人いないかな

form_forブロックの中のrender :partialの悩みを解決

この悩みとは、次のようなことではないかと思います。

  • newとeditは似たページであるので、似た部分を一つの記述ですませたい
  • 基本的には共通部分をパーシャルテンプレートにすればよい
  • ボタンやテキストフィールド等の要素の配置は共通だが、要素の生成方法が微妙に違う
  • 生成方法の違いを、テンプレート間で受け渡す記述が必要になるが、:localsによる受け渡しがもう一つしっくり来ない

Amrita2を使えば、この問題は解決します。

実際のアプリケーションでは、これと同じパターンでもう少し複雑な問題になると思うのですが、それに柔軟に対応しつつDRYに書けると思います。

というのは、上の例ではnewとeditの違いがボタン一つだったので、受け渡すパラメータも一つだけで済みます。パーシャルテンプレートが複数のページから使用されて、それぞれに微妙に違う要求があったような場合に、Amrita2は有効です。

Amrita2のsample/depotのadminコントローラから引用します。

(view/admin/new.html.a2)

<h1>New product</h1>

  <%
    form = amrita_define_form(
             :product,
             @product,
             :url=>{:action=>:create }
           ) do |f|
      f.text_field :title
      f.text_area :description
      f.text_field :image_url
      f.text_field :price
      f.add_field_element :submit, submit_tag("Create")
    end
  %>

  << :form | AcceptData[:hook] <
    %= render :partial => 'form', :object=>$_

(view/admin/edit.html.a2)

<h1>Editing product</h1>

  <%
    form = amrita_define_form(
             :product,
             @product,
             :url=>{:action=>:update, :id=>@product}
             ) do |f|
      f.text_field :title
      f.text_area :description
      f.text_field :image_url
      f.text_field :price
      f.add_field_element :submit, submit_tag("Update")
    end
  %>

  << :form | AcceptData[:hook] <
    %= render :partial => 'form', :object=>$_

(view/admin/_form.html.a2)

%= error_messages_for 'product'

<< :form <
  <<p<
    <label for="product_title">Title</label><br/>
    <<:title>>

  <<p<
    <label for="product_description">Description</label><br/>
    <<:description>>

  <<p<
    <label for="product_image_url">Image url</label><br/>
    <<:image_url>>

  <<p<
    <label for="product_price">Price</label><br/>
    <<:price>>

  <<:submit>>

まずパーシャルテンプレートの _form.html.a2 から説明すると、ここでは、title description 等の要素をどういう形で、どこに配置するかだけ指定しています。個々の要素の生成は一切行なっていません。

それを生成しているのが、newとeditの中にある次の部分です。

    form = amrita_define_form(
             :product,
             @product,
             :url=>{:action=>:update, :id=>@product}
             ) do |f|
      f.text_field :title
      f.text_area :description
      f.text_field :image_url
      f.text_field :price
      f.add_field_element :submit, submit_tag("Update")
    end

amrita_define_formは、form_forのラッパーで、同じパラメータを同じ順番で受け取ります。そして、こちらでは、逆に「どこに配置するか(WHERE)」ということは後回しにして、「何を配置するか(WHAT)」についての記述だけを行います。

fのメソッドも、form_forの時とほぼ同じですが、

  • add_field_elementというメソッドが追加されている
  • それ以外は、FormHelperと同じだが、一つ目のパラメータがフィールドのIDとなり、後程、そのIDに対応した場所に配置される

ということになります。

例えば、修正時には、titleが変更できなくて、テキストフィールドの代わりに単なる文字列で表示するとしたら、次のようにします。

    form = amrita_define_form(
             :product,
             @product,
             :url=>{:action=>:update, :id=>@product}
             ) do |f|
      f.add_field_element :title, @product.title # ← ココ
      f.text_area :description
      f.text_field :image_url
      f.text_field :price
      f.add_field_element :submit, submit_tag("Update")
    end

こうすると、テキストフィールドが表示されていた位置に、その内容の文字列がそのまま表示されます。

それで、親子で受け渡しされる変数は常に一個で同じ記述ですみます。

  << :form | AcceptData[:hook] <
    %= render :partial => 'form', :object=>$_

$_ は、Amrita2のコンテキストバリューと言って、その時点で評価に使われている値です。この場合は、フィールドと要素の対応を示すハッシュになっています。:object を使っているので、このハッシュがパーシャルテンプレートに(テンプレート名と同じ名前の変数として)渡されます。

ここは、Amrita2の中でも最もトリッキーな所なので、かえってわかりにくいと感じるかもしれませんが、

  • ベーステンプレートでWHATを指定する
  • パーシャルテンプレートでWHEREを指定する

という機能の分離はきれいにできていると思います。WHATの部分(amrita_define_form)はヘルパーメソッドにすることもできるので、

  • 一つのWHATを複数のWHEREで共有する
  • 一つのWHEREを複数のWHATで共有する

という両方のDRYが実現できます。